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東京地方裁判所 昭和44年(ワ)13523号 判決 1983年6月27日

原告

日本国有鉄道

右代表者総裁

高木文雄

右訴訟代理人

斉藤健

外四名

被告

猪野二三男

外三名

(以上四名の被告を以下被告猪野らという。)

被告

生川正洋

外四名

(以上五名の被告を以下被告生川らという。)

被告

小田一美

外四名

(以上五名の被告を以下被告小田らという。)

被告

川村明

外四名

(以上五名の被告を以下被告川村らという。)

被告

増田孝

三坂洋一

右被告猪野ら訴訟代理人

木内俊夫

右被告生川ら訴訟代理人

庄司宏

西垣内堅佑

右被告小田ら訴訟代理人

小泉征一郎

右被告川村ら訴訟代理人

斉藤浩二

右被告増田孝訴訟代理人

堀口嘉平太

右被告三坂洋一訴訟代理人

平林正三

田口哲朗

主文

一  被告らは各自原告に対し、金二七八二万五六三七円及びこれに対する昭和四三年一〇月二二日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二  訴訟費用は被告らの負担とする。

三  この判決は仮に執行することができる。

事実《省略》

理由

一請求原因1の事実<編注・国鉄の地位、業務>は当事者間に争いがない。

二  国際反戦デー当日の各派学生の行動について

<証拠>を総合すれば、以下の事実が認められる(一部当事者間に争いのない事実を含む。)。

1中核派、革マル派、ML派、四トロ派及びフロント派、プロレタリア軍団などと呼称する学生運動組織は、いずれも、昭和四三年一〇月二一日の国際反戦デーにおいて、ベトナム戦争反対運動の一環として、当時国鉄新宿駅を経由して行なわれていた米軍用シェット燃料の輸送阻止を闘争目標として掲げ、夜間同駅周辺で無許可デモを行つたうえ、同駅構内を実力で占拠し、運行施設を破壊することにより、列車の運行を妨害することを企図していた。

2  国際反戦デー当日における新宿駅東口前広場までの各派の行動

(一)  中核派、ML派及びプロレタリア軍団などに所属ないし同調する学生ら約八〇〇名は、国際反戦デー当日午後四時ころ、その大半が自派の標識のあるヘルメットを着用し、旗竿、角材などを携行して、東京都千代田区神田駿河台二―一所在明治大学旧学生会館前附近路上に集結して決起集会を開き、被告吉羽、同谷ら各派指揮者において、騒擾罪が発生する虞れがあるとして出動する警察部隊を打ち破り、新宿駅構内を混乱に陥れ、同駅を経由して行われている米軍用ジェット燃料の輸送を阻止するため、徹底的に闘争を展開すべき旨演説し、あるいは「米タンを実力で阻止するぞ。」「騒乱罪をはねのけて戦うぞ。」などとシュプレヒコールの音頭をとるなどして前記闘争目標を徹底せしめた。

(二)  一方、四トロ派に所属ないし同調する学生ら約六〇〇名も、午後四時三〇分ごろまでに、その大半がヘルメットを着用し、角材などを携行して、東京都千代田区神田小川町所在中央大学構内に逐次集結し、同大学学生会館前路上において決起集会を開き、同派指揮者において、(一)と同趣旨の演説をするなどして闘争目標を徹底せしめ、気勢を高揚した。

(三)  これらの学生は、いずれも国鉄お茶の水駅付近に集合したが、右各派集団のうち、中核派、ML派学生らを主力とする約七〇〇名の集団及び四トロ派学生らを主力とする約一〇〇名の集団は、午後六時すぎころ、同駅から国電に分乗して国鉄新宿駅に向い、途中先頭の一団は、国鉄代々木駅で一斉に下車して線路上に降りたち、また後続の集団も、停車した電車の非常コックを開けるなどして線路上に飛び下り、被告吉羽、円谷、同魚谷、同米田ら指揮者の指示のもとに、各派ごとに隊列を組み、「米タン紛砕」、「米タンを実力で阻止するぞ」などとシュプレヒコールを繰り返しながら線路上を国鉄新宿駅まで行進したが、警察官の検挙、排除活動により一旦は分散したものの、同日午後七時ごろまでに東口広場に再集結した。

(四)  国鉄お茶の水駅から国電に分乗した各派集団のうち、ML派を主力とする約一〇〇名の別動隊は、途中国鉄四ツ谷駅で下車し、指揮者の指示のもとに、投石用に線路砕石を捨い集めるなどした後、午後七時すぎごろ、東口広場に集結し、(三)の学生らと合流した。

(五)  一方、革マル派、フロント派に所属ないし同調する学生ら約一五〇〇名の集団は、午後四時すぎころから午後五時三〇分ごろまで、大半が自派の標識のあるヘルメットを着用し、角材、竹竿などを携行し、同都文京区本郷所在東京大学安田講堂前に集結して決起集会を行ない。被告猪野ら指揮者において、警察部隊による警備が厳重を極めても、これに負けずに米軍用ジェット燃料を阻止するため、新宿闘争を行うべき旨演説して闘争目標を徹底せしめ、気勢を高揚した。右集団は午後六時ごろ同大学を出発し、地下鉄本郷三丁目駅から地下鉄に乗車し、地下鉄四ツ谷駅で下車し、同駅附近に集結し、指揮者らの指示のもとに、「米タン阻止」などとかけ声をかけながら、国会に向けてデモ行進を行ない、同都千代田区麹町一―四所在麹町警察署前附近において、警備中の警察官らに対し、歩道の敷石をはがすなどして激しい投石を行なつた後、国鉄四ツ谷駅麹町口附近路上に集結して集会を行ない、被告猪野らにおいて、新宿駅東口附近において徹底的に闘争を展開し、途中警察部隊の阻止線と衝突しても、これを打ち破つて進むべき旨演説して気勢をあげた後、各派ごとに隊列を組み、新宿通りを国鉄新宿駅方面に向い、午後九時すぎころ、東口広場に到着した。

3  東口広場到着後の各派の行動

(一)  前記のとおり、午後七時すぎころから、東口広場に到着しはじめた中核派、ML派、四トロ派などの各学生らの集団は、これらの集団の前記企図に同調し、関心を寄せて同広場及びその附近に集まつていた一般学生や一般人約七〇〇〇名の見守る中で集団デモ行進などを行なつていたが、まもなく、そのうち、中核派学生ら約五〇〇名、ML派学生ら約三〇〇名は同広場中央の地下道出入口前に坐り込んで合同の集会を行ない。その際、被告吉羽、同魚谷ら各派指揮者において、右地下道出入口屋根上から、「米タン阻止闘争は弾圧をはねのけて戦わなければならない。」「我々の戦いは、労働者が立ちあがるための起爆剤である。」などと演説し、あるいは、「最後まで戦うぞ。」などとシュプレヒコールの音頭をとつて、右各派学生らの気勢を高揚するとともに、同広場に集まつた群衆に対し、闘争への参加、支援を訴え、さらに、指揮者の指示のもとに各派学生らが同広場から新宿通りにかけてデモ行進をしていた間も、被告吉羽ら指揮者は、引き続き同広場に集まる群集に対し、同様の演説を繰り返し、午後八時すぎころ右各派学生らが右地下出入口前に集結するや、被告谷、同魚谷ら指揮者において、「本日の米タン阻止闘争を最後まで貫徹しよう。」「機動隊の壁を実力で突破することによつて米タン輸送阻止を貫徹しよう。」などと演説し、米タン阻止闘争を勝ち抜くためには、有形力を行使して新宿駅構内に侵入し、さらに警察部隊の制止を排して実力で駅構内を占拠し、施設等を破壊し列車の運行を妨害すべきことを指示激励して、その気勢を高揚するとともに、集まつた群衆に対して闘争への参加支援を呼びかけた。集会に参加した各派学生はかん声をあげてこれに呼応し、群衆の中からも拍手と声援が起こつた。

(二)  右各派学生ら集団のうち、中核流、ML派の一部約一〇〇名は、(一)の集会が終わると、午後八時四五分ごろ、被告吉羽の指揮により隊列を組み、東口広場西側ステーションビル附近から通称大ガードの方向に約七八メートルの間、同駅周囲にめぐらされた鉄塀による障壁前に前進し、これを所携の角材で叩くなどして鉄塀の破壊作業を開始し、続いて、四トロ派、中核派、プロレタリア軍団などの各派学生ら約三五〇名もこれに加わり、鉄塀及びこれに続く大ガード寄りの映画看板による障壁を角材や角柱などで激しく叩きあるいは突くなどして破壊作業を行ない。午後八時五二分ごろ、右映画看板の一部が破壊されるや、その突破口(以下破壊口という。)から、四トロ派を先頭に、中核派、ML派学生ら約二五〇名が駅構内に次々と侵入した。そして、それぞれ自派の標識のある旗や角材などを携行して線路上をホーム方向に進んだが、これら侵入者を排除するために進出してきた警察部隊の規制にあい、いつたんは前記破壊口から駅構外に逃走したものの、右破壊口の内側に阻止線を張つた警察部隊に対し、前記映画看板の外側から激しい投石を行つて、同部隊を後退させ、午後九時すぎごろには、再び、中核派、四トロ派学生ら約一〇〇〇名が続々と右破壊口から駅構内に侵入し、自派の標識のある旗や角材などを携行して線路上を一杯に広がつて第一ないし第五の各ホームや貨物線方向に前進しながら、線路上の砕石を捨つて一斉に投石を行ない、侵入者の排除に従事していた警察部隊と一進一退を繰り返しつつ、徐々に同部隊をホーム方向に後退させ、また、これら各派集団の行動に同調する群衆も右破壊口などから駅構内に侵入し、右各派集団とともに警察部隊に対し投石を行ない、あるいはこれと進退をともにし、これら群衆を含む駅構内に侵入した集団は、後退する警察部隊を追つてホーム北端附近に迫り、午後九時二〇分ごろには、警察部隊を各ホーム上に後退させたうえ、同部隊に対し激しい投石を行なつた。

(三)  さらに革マル派約一〇〇〇名、フロント派約四〇〇名の集団は、午後九時すぎごろ東口広場に到着し、前記映画看板の破壊口から駅構内に侵入して、さきに侵入していた集団に加わり、前同様警察部隊に対し、激しい投石を行い、午後九時四〇分ごろには、ML派の主力集団約二五〇名も前記鉄塀の破壊口から駅構内に侵入し、また、右各派集団の企図及び行動に同調するその他の学生、群衆も相次いで前記破壊口などから駅構内に侵入し続けたので同時刻ごろには、駅構内に侵入した者の総数は三〇〇〇名をこえるに至つた。

(四)  これら各派集団及び群衆は、各ホーム上、各ホーム間の線路上、貨物線線路上にまで一杯に広がつて進みながら、第二、第三ホーム上の警察部隊に対し激しい投石を行ない、また、第一、第二ホームの間に停車中の貨物列車(国分寺行き、二七四一。二四両編成)の連結貨物車の間や列車越しに、あるいは、タンク車や貨車の上に登つて右警察部隊に投石し、さらに、右貨物列車、第二ホーム三番線に停車中の普通列車(甲府行き、五五三M。九両編成)、第三ホーム六番線に停車中の下り快速電車(高尾行き、一八〇七A。一〇両編成)、各ホーム上の運転事務室、各種掲示器、信号施設等に対しても手あたり次第に投石を行ない、角材で叩くなどしてこれらを破壊した。

(五)  右激しい投石のため、午後九時四五分ごろまでに警察部隊がやむなく各ホーム上より同駅南口方向に後退して、甲州街道陸橋附近に後退するや、駅構内に侵入した学生ら数十名は、これを追跡して南口改札前路上まで進出して投石し、あるいは、駅構内備え付けの消火ホースを用いて放水し、さらに右警察部隊の進出を阻止すべく、出札事務室などから机、告知板、箱などを持ち出して改札口や附近道路上に積み上げてバリケードを構築しつつ、右部隊に対し投石、放水を続けた。その間、駅構内においては、侵入した各派学生集団及び群衆らが線路上及びホーム上を完全に占拠し、被告谷、同鈴木ら指揮者の指示のもとに、デモ行進を繰り返すとともに、ある者は、前記のとおり電車、駅施設などに対する破壊を続け、また、ある者は、前記鉄塀内側の線路上、新宿ステーションビル脇線路上などにおいて、相次いで警察部隊の遺留した防石ネット、楯などを積み上げたうえ、線路上の枕木などを燃やして気勢をあげるなどしていた。

(六)  さらに、駅構内に侵入した学生、群衆らのうち十数名は、午後一一時すぎごろ、前記第二ホーム三番線に停車中の普通列車内から数十個の座席シートを持ち出し、これを同ホーム南口階段中程のおどり場に積み上げでバリケードを構築し、また、これに呼応して、第三ホームにおいても一部の者が前記同ホーム六番線に停車中の下り快速電車内などから持ち出した座席シートなどを同ホーム南口階段上り口に積み上げてバリケードを構築するに至つたが、午後一一時四〇分ごろ、第二ホーム上の一人が新聞紙に点火し、これを右バリケードの座席シートの間に差し込んで火を放ち右座席シートを炎上させたところ、被告半澤は他の者とともに他の座席シートなどを投入するなどして火勢を強め、同ホーム南口階段おどり場附近の両側板壁に燃え移らせた。

(七)  警視庁は、当日の違法事犯の状況をテレビ撮影によつて採証するため、新宿ステーションビル南側の鉄道公安室駐車場内にテレビ車を配置したが、駅構内に侵入した各派集団などの企図及び行動に同調する多数の学生、群衆は、午後九時ごろテレビ車の附近に集まりはじめ、テレビ車に投石を開始したので、午後九時二〇分ごろ、車内で採証活動を行なつていた警視庁係官はテレビ車から退避した。右学生、群衆は、午後一一時ごろまでに、テレビ車を同駐車場内から引き出して同駅中央口広場に移動させた。同所に居合わせた被告増田は、午後一一時三〇分ごろ、他の十数名とともにテレビ車の車体にロープをかけ、周囲の学生、群衆ら多数とともにこれを引張り、または車体を押し、あるいは角材を車体の下に差し込んでこれを持ち上げるなどして車体を横転させ、さらに、午後一一時三〇分ごろ、周囲の群衆の喚声や声援の中で数名が、同車のガソリンタンクからガソリンを流出させたうえ、これに点火して火を放ちテレビ車を炎上、爆破させた。その際被告増田は、「火をつけて燃やしてしまえ。」等と怒号して気勢をあおつた。

(八)  右新宿駅構内に侵入した各派学生、群衆の投石、放火などの集団的暴行による駅施設破壊行為の結果、原告所有の別表(一)損壊物件名欄記載の各物件(所在位置は別紙図面表示のとおり)<省略>が損壊された。

以上の事実が認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

三  各被告の行動について

二に認定した事実と前掲各証拠を総合すれば、以下の事実が認められる(一部当事者間に争いのない事実を含む。)。

1  被告猪野

同被告は、本件当時早稲田大学の学生であり、革マル派に所属していたが、前記二2(五)の認定のとおり、国際反戦デー当日午後九時ごろ、多数の革マル派学生らを引率して、東京大学から四ツ谷駅を経て、東口広場に至り、午後九時一八分ごろ、約八〇〇名の革マル派学生らを指揮、引率して前記破壊口から新宿駅構内に侵入したうえ、線路上に集結した右集団の先頭に立ち、手を振りこれを誘導して第二ホーム附近に前進せしめて警察部隊に立ち向かわせ、投石等を行なわせた。

2  被告半澤

同被告は、本件当時土工であつたが、本件当日午後八時ごろ、東口広場に赴き、同所で開かれた、中核、MLなど各派学生らによる合同の集会やデモ行進を見物中、各派指揮者らの闘争参加の呼びかけを受けて前記各派学生らの意図に共鳴し、午後八時四五分ごろ、中核派集団により開始された同駅東口側の前記鉄塀の破壊作業をみとめるや、これら集団に加担することを決意し、午後八時五二分ごろ、右中核派集団とともに、自らその先頭を切つて前記破壊口から同駅構内に侵入したうえ、同所附近や第一ホーム北端附近の各線路上及び第一、第二、第四ホーム上などにおいて、各ホーム上及び線路上において侵入者を排除、検挙すべき任務に従事していた警察部隊に対し、多数の学生らとともに多数回に亘り投石を行ない、その後も構内を移動して、同駅南口改札口附近で警察部隊に多数回に亘り投石を行ない、さらに、前記二3(六)認定のとおり、午後一一時三八分ごろ、同駅構内に侵入した者の一部が第二ホーム南口階段中程のおどり場に数十個の列車用座席シートなどを積み上げて構築したバリケード附近で、学生、群衆らが、「火をつけろ、燃やしてしまえ」などと騒いでいるのを見るや、自らもこれらの者とともにバリケードに火をつけようと決意し、その場にいたほか十数名の者のうち一人が、新聞紙に点火し、これをバリケードの座席シートの間に差し込んで火を放ち、これが炎上しはじめるや、自ら他の座席シートを投げ込むなどして、さらに炎上させた。

3  被告藤井

同被告は、本件当時東洋大学の学生であつたが、本件当日午後に同大学において開かれた本件行動についての討論会に参加した後、午後七時すぎごろ、同大学生グループ約六〇名を引率して、四ツ谷駅、地下鉄新宿三丁目駅を経て東口広場に至り、右約六〇名の学生らが同広場附近においてデモ行進をした際、その先頭に位置し、「米タン輸送阻止」などとかけ声をかけて、気勢を高揚するなどして、その進退を指揮し、午後九時すぎごろ、右学生らを率いて前記破壊口附近から同駅構内に侵入したうえ、右学生らを警察部隊に投石を行なうなどして同駅構内を占拠している学生らに加わらせ、さらに、線路上から第四ホーム上に前進し、その間右学生らの隊列の先頭に立つて、手で合図をするなどして、その進退を指揮した。

4  被告魚谷

同被告は、昭和四一年一月早稲田大学を中退し、ML派に所属していたものであるが、前記二2(三)認定のとおり、本件当日午後七時すぎごろ、多数のML派学生らを引率し、国鉄代々木駅構内線路上を経て東口広場に至り、同広場で開かれた中核、MLなどの各派学生らによる合同の集会において、他の各派指揮者らとともに前記中央地下道出入口屋根上から、数回に亘り、多数の各派学生らに対し、警察権力の弾圧をはね返して米軍用ジェット燃料の輸送阻止闘争を実力で戦うべき旨任務、行動を指示し、激励するとともに、「我々は戦うぞ」などとシュプレヒコールの音頭をとるなどし、さらに各派集団が前記破壊口などから駅構内に侵入を開始したころから午後九時ごろまでの間、前記屋根上から、各派集団及び群衆に対し、「全学連の学生はバリケードを突破して駅構内に突入しました。この人民広場を断固として死守しようではないか。」などと演説し、各派集団の気勢を高揚するとともに、周囲のその他の学生、群衆への参加と支援を訴えた。

5  被告生川

同被告は、本件当時一橋大学の学生であり、四トロ派集団に加わつて本件行動に参加したものであるが、本件当日午後七時すぎごろ、同大学において開かれた四トロ派の集会に参加した後、中央大学学生会館前、国鉄代々木駅構内線路上を経て東口広場に至り、約二〇〇名の四トロ派学生らとともに新宿通りをデモ行進し、あるいは、同広場で開かれた中核、MLなどの各派の学生らによる合同の集会に参加するなどしていたが、午後九時ごろ、多数の四トロ派学生らとともに、前記破壊口から同駅構内に侵入したうえ、同所附近の線路上をホーム方向に殺到し、同方向から進出してこれら侵入者を排除、検挙すべき任務に従事していた警察部隊に対し、他の多数の学生らとともに自ら数回投石を行なつた。

6  被告山本

同被告は、本件当時芝浦工業大学の学生であり、四トロ派集団に加わって、本件行動に参加したものであるが、午後七時すぎころ、同大学大宮校舎から中央大学学生会館前、国鉄代々木駅構内を経て、東口広場に至り、約二〇〇名の四トロ派学生らとともに、新宿通りをデモ行進し、あるいは同広場で開かれた中核、MLなどの各派学生らによる合同の集会に参加するなどしていたところ、午後八時五〇分ごろ四トロ派学生ら約五〇名とともに、同駅東口側の映画看板による障壁前に至り、指揮者の号令のもとに、右学生らとともに、右看板を所携の角材で乱打するなどして破壊口をつくり、午後八時五二分ごろ、右四トロ派学生らとともに同所から同駅構内に侵入したうえ、同所附近の線路上をホーム方向に殺到し、同方向から進出して侵入者を排除、検挙すべき任務に従事していた警察部隊に対し、他の学生らとともに自ら数回投石を行つた。

7  被告大平

同被告は、本件当時芝浦工業大学の学生で、四トロ派学生の同調者であり、本件行動に参加したものであるが、本件の前日の8記載の被告山田の指示命令を受け、本件当日午後七時すぎごろ、四トロ派学生ら約六〇名を引率して、同大学大宮校舎から中央大学学生会館、国鉄代々木駅構内線路上を経て東口広場に至り、右集団の先頭に位置して、同所附近及び新宿通りをデモ行進し、あるいは同広場で開かれた中核、MLなどの各派学生らによる合同の集会に参加するなどしていたところ、午後八時五〇分ごろ、デモ行進中の各派集団の先頭に位置する四トロ派学生ら約五〇名を指揮、引率して、同駅東口側の映画看板による障壁前に至り、右手を振り上げ、「突込め」などと繰り返し叫びながら自ら右看板の一部を引き剥がして破壊口をつくり、午後八時五二分ごろ、先頭に立つて同所から同駅構内に侵入したうえ、「入れ、入れ」と叫んで右障壁の外側にいる後続の学生らを次次と駅構内に侵入させ、さらに、同所附近の線路上において、右学生らを指示して隊列を整えさせ、その先頭に位置して笛を吹くなどして隊列をホーム方向に向かわせ、同方向から進出して侵入者の排除、検挙に従事していた警察部隊に対し、自らも右学生らとともに投石を行なつた。

8  被告山田

同被告は、本体当時芝浦工業大学の学生で、同大学学生自治会執行委員長の地位にあるとともに、四トロ派に所属していたものであるが、昭和四三年一〇月二〇日午後六時ごろ同大学大宮校舎自治会室において、被告大平ら約一〇名の学生に対し、翌二一日は東口広場附近の前記映画看板による障壁を破壊して同駅構内に侵入したうえ同駅を占拠し、米軍用ジェット燃料の輸送を実力をもつて阻止し、かつ、同所を人民管理の場とすべき旨指示命令するとともに、当日の指揮者として被告大平外一名を指名し、本件当日午後零時ごろから同校舎敷地内で開かれた総決起集会において、学生ら約一五〇名に対し、前同様の演説をなし、米軍用ジェット燃料の輸送阻止闘争への参加を呼びかけるとともにその気勢を高揚したうえ、自ら約二〇名の学生らを引率し、午後三時すぎころ、中央大学学生会館前に至り、同所において、右約二〇名の学生らに指示してこれを二個班に編成したうえ、警備の警察部隊と衝突した際は終始同一行動をとるべきことなど新宿駅附近での行動並びに逮捕された際の注意事項等を伝達、指示した。

その後、同被告は、右学生らを約一八〇名の四トロ派学生らとともに国鉄新宿駅へ向かわせた。

9  被告櫻井

同被告は、本件当時、東洋大学の学生であつたが、本件当日午後七時すぎごろ、同大学生約六〇名とともに、同大学から四ツ谷駅、地下鉄新宿三丁目駅を経て東口広場に至り、同広場で開かれた中核、MLなどの各派学生らによる合同の集会に参加し、同所附近において右約六〇名の学生らがデモ行進をした際、その先頭に立ち、これを誘導して気勢を高揚するなどした後、午後九時すぎごろ前記破壊口から右学生らとともに同駅構内に侵入したうえ、ホーム方向に進出し、警察部隊やタンク車の状況などを偵察してその結果を右学生らに報告し、さらに自ら先頭に立つて侵入者を排除、検挙すべき任務に従事していた警察部隊に投石し、あるいは右学生らの進退を誘導した。

10  被告小田

同被告は、本件当時国学院大学の学生であり、中核派集団に加わつて本件行動に参加したものであるが、本件当日午後四時ころから、明治大学旧学生会館前路上の中核派等の集会に参加し、同派学生らとともに東口広場に至り、午後七時すぎころから、同広場において開かれた中核、MLなどの各派学生らの合同の集会に参加した後、午後九時すぎごろ、多数の中核派学生らとともに前記破壊口から同駅構内に侵入したうえ、警察部隊に投石するため石を手にして第一ホーム東側線路上の中核派学生ら五〇ないし一〇〇名のデモ集団の先頭に立ち、笛を吹き、先頭の者が横に携えた棒を引つぱつて前進し、その進退を誘導した。

11  被告谷

同被告は、本件当時横浜国立大学の学生で、中核派に所属していたものであるが、前記二2(一)認定の集会の後、午後七時すぎごろ、多数の中核派学生らを引率して、明治大学旧学生会館前路上から国鉄代々木駅構内線路上を経て東口広場に至り、同広場で開かれた中核、MLなど各派学生らによる合同の集会において、前記二3(一)認定のとおり、他の各派指揮者らとともに中央地下道出入口屋根上から、多数の各派学生らに対し、米軍用ジェット燃料輸送阻止闘争を貫徹するため、出動した警察部隊の壁を突破して最後まで戦い抜くべき旨任務、行動を指示、激励し、さらに、多数の各派学生らとともに、同駅構内に侵入したうえ、午後九時五五分ごろ、前記二3(五)認定のとおり、第一ホーム東側線路上において、隊列を組んで行進する中核派学生ら数十名の先頭に位置し、笛を吹くなどして、その進退を指揮した。

12  被告瀬川

同被告は、本件当時慶応義塾大学の学生で、中核派に所属して本件行動に参加したものであるが、本件当日午後七時すぎごろ、約二〇名の中核派学生を引率して、同大学日吉校舎から明治大学旧学生会館前を経て東口広場に至り、午後八時五〇分ごろ、同駅構内の鉄塀による障壁を破壊中の中核派集団の先頭に位置し、既に破壊された同所附近映画看板による障壁外側路上から、駅構内で侵入者を排除、検挙すべき任務に従事していた警察部隊に対し、他の数十名とともに、自らその先頭に立つて投石し、そのころ多数の中核派学生らとともに同駅構内に侵入したうえ警察部隊に投石すべく石を所持して右学生らの先頭に立ち、線路上を第一ホーム路上まで進出した。

13  被告保谷

同被告は、本件当時法政大学の学生で、中核派に所属していたものであるが、本件当日午後九時すぎころ、多数の中核派学生らとともに前記破壊口附近から同駅構内に侵入したうえ、午後九時四五分ごろ、第一ホーム上からその東側線路上に至るまでの間、多数の中核派学生らの先頭に位置し、笛を吹き、あるいは投石用の石を所持してその進退を誘導した。

14  被告桒原

同被告は、昭和四二年三月日本大学を中退し、中核派集団に加わつて本件行動に参加したものであるが、本件当日午後七時すぎごろ、国鉄代々木駅構内線路上を経て東口広場に至り、同広場で開かれた中核、MLなど各派学生らによる合同の集会に参加し、あるいは、新宿通りをデモ行進するなどしていたところ、午後八時五〇分ごろ、同駅東口側の鉄塀による障壁の破壊を開始した多数の中核派学生らとともに、角柱をもつて鉄塀を突き、ついで午後八時五二分ごろ、前記破壊口から多数の中核学生らとともに同駅構内に侵入したうえ、これら多数の学生の先頭に位置してホーム方向に前進し、第三、第四ホーム間の線路上から、第三ホーム上で侵入者を排除、検挙すべき任務に従事していた警察部隊に対し、学生らとともに自ら数回投石して攻撃をくり返した。

15  被告川村

同被告は、本件当時横浜国立大学の学生で、中核派に所属し、同派中央執行委員の地位にあつたものであるが、本件当日午後七時すぎごろ、国鉄代々木駅構内線路上を経て東口広場に至り、同広場で開かれた中核、MLなど各派学生らによる合同の集会に参加するなどしていたところ、午後九時すぎごろ、多数の中核派学生らとともに破壊口附近から同駅構内に侵入したうえ、自らも数個の投石用の石を所持して、線路上をホーム方向に前進する数十名の中核派学生らの先頭に位置して進み、さらに午後九時四一分ごろ、第二ホーム上においても投石用の石を所持して警察部隊に立向つた。

16  被告吉羽

同被告は、昭和四一年一一月東京工業大学を中退し、本件当時中核派に所属し、同派中央執行委員、国際部長の地位にあつたものであるが、本件当日午後四時ごろから明治大学旧学生会館前附近路上で開かれた前記二2(一)認定の中核、MLなどの各派学生らによる集会において、約八〇〇名の学生らに対し、指揮者として、騒擾罪発生のおそれがあるとして出動する警察部隊による規制を打ち破り、米軍用ジェット燃料の輸送阻止闘争を最後まで徹底的に戦うべき旨任務、行動を指示、激励するなどし、その後多数の中核派学生らを引率して午後七時すぎごろ、国鉄代々木駅構内線路上を経て東口広場で開かれた中核、MLなどの各派学生らによる合同の集会において、他の各派指揮者らとともに前記中央地下道出入口屋根上から、多数の各派学生ら及びその周辺に集まつていたその他の学生、群衆らに対し、「我々の戦いは労働者が立ち上がるための起爆剤である。一緒に戦おう。」などと演説してその気勢を高揚するとともに、群衆に闘争への参加と支援を訴え、さらに、午後八時四五分ごろ、自ら指揮して約一〇〇名の中核派学生らを同駅東口側障壁の鉄塀附近に前進させたうえ、鉄塀の破壊作業にとりかからせるとともに、そのころ多数の各派学生らとともに同駅構内に侵入した(二3(一)(二)認定のとおり)。

17  被告丸山

同被告は、本件当時横浜国立大学の学生で、中核派執行委員、書記局次長、救対部長の地位にあつたものであるが、本件当日、前記二2(一)認定の集会に参加し、その後、午後八時一六分ごろ東口広場で開かれた中核、MLなどの各派学生らによる合同の集会に参加したが、午後九時すぎごろ中核派学生ら数百名とともに前記破壊口から同駅構内に侵入し、侵入者を排除、検挙すべき任務に従事していた警察部隊に投石するため、投石用の石を手に持つて線路上をホーム方向に進出し、さらに午後一〇時ごろ警察部隊を追つて、同駅南口前路上まで進出した。

18  被告米田

同被告は、本件当時横浜国立大学の学生であり、中核派集団に加わつて本件行動に参加したものであるが、本件当日、前記二2(一)認定の集会に参加し、その後中核派集団とともに午後七時すぎごろ、国鉄代々木駅構内線路上を経て東口広場に至り、中核派集団の先頭に立つて新宿通りをデモ行進するなどした後、午後八時五〇分ごろ、中核派学生らが鉄塀、映画看板を破壊するに際し、「やれ、やれ」と叫んでこれを指揮し、自らも他の学生らとともに角柱をもつて鉄塀を突くなどし、さらに、午後九時ごろ、右破壊口から数百名の学生とともに新宿駅構内に侵入し、侵入者を排除、検挙すべき任務に従事していた警察部隊に投石するため、投石用の石を持つてホーム方向に前進し、第一ホームに上がり、中核派学生らが第二ホーム上の警察部隊に投石するに際し、笛を吹き手を振つてこれを指揮した。

19  被告鈴木

同被告は、本件当時法政大学の学生で、中核派に所属し、同派中央執行委員の地位にあつたものであるが、本件当日午後八時五五分ごろ、同駅東口側において前記鉄塀による障壁を破壊中の中核派集団の先頭に位置し、そのころ、多数の各派学生らとともに破壊口から同駅構内に侵入したうえ、午後九時四五分ごろ、第一ホーム東側線路上において、隊列を組んで行進する多数の中核派学生らの先頭に位置してこれを引率し、その進退を指揮した。

20  被告増田

同被告は、本件当日午後一〇時三〇分ごろ、同駅南口に至り、同所において、多数の学生らが警察部隊に投石しているのを見物した後、午後一一時二〇分ごろ、同駅中央口広場において、多数の学生、群衆がテレビ車を取り囲み、「火をつけて燃やしてしまえ。」などと口々に叫んでいるのを見るや、自らもこれに加わり、これらの者とともに同車に火をつけ炎上させようと決意し、前記二3(七)認定のとおり、多数の学生、群衆らとともにテレビ車を横転炎上するに至らしめた。

21  被告三坂

同被告は、本件当日の夕方、前記一2(五)認定の東京大学安田講堂前の集会に参加した後、右学生らの隊列に加わつて、地下鉄本郷三丁目駅から四ツ谷駅に至り、同所から国会へ向けてデモ行進するうち、警備中の警察部隊の規制に会い、付近の民家に潜んだりしたのち、附近の主婦より革マル派の標識のある白いヘルメットを受取り、四ツ谷駅から新宿駅方面ヘデモ行進する革マル派の学生集団の隊列に加わり、フロント派の学生集団とともに午後九時すぎごろ東口広場に至り、一旦、革マル派集団から離れたが、同派集団が前記破壊口に向うや、同派集団が米軍用ジェット燃料輸送阻止のために同駅構内に侵入して同駅構内を占拠する意図のもとに侵入しようとしていることを知りながら、同派集団とともに同駅構内に侵入し、多数の学生とともに線路上から三ホーム上で侵入者を排除、検挙すべき任務に従事していた警察部隊に対し投石し、さらに、第三ホーム上にかけあがつて投石をくり返した。

以上の事実が認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

四  共同不法行為について

二に認定のとおり、昭和四三年一〇月二一日の国際反戦デーにおける中核派、革マル派、四トロ派、ML派、フロント派、プロレタリア軍団その他学生集団の、国鉄線による米軍用ジェット燃料輸送阻止を闘争目標とし、同目標を達成するために新宿駅構内を占拠し、運行施設を破壊して列車の運行を妨害することを目的とした集団行動に際し、午後八時四五分ごろの鉄塀による障壁の破壊に始まり、翌二二日午前一時ごろ警察部隊の規制終了に至る間の右学生集団及びこれに同調、共鳴する一般市民の集団的暴力行為により、原告は別表(一)損壊物件名欄記載の各物件を損壊されたものであるが、三に認定した事実によれば、被告らは右集団的暴力行為に右新宿駅構内占拠及び運行施設の破壊による列車の運行妨害の目的を認識し、支持同調したうえで参加したものであることが明らかである。

すなわち、被告らは、新宿駅構内占拠及び運行施設の破壊による列車の運行妨害を事前に共謀し、あるいは共同の認識を有し(被告半澤、同増田を除く被告ら)、同日午後八時ごろ東口広場において各派学生らの集会に参加して前記目的を認識し、自らも右目的を有するに至り(被告半澤)、あるいは、同日午後一一時二〇分ごろ、右目的を認識し、自らも右目的を有するに至つて(被告増田)、三認定の各被告の行為を行なつたものである。そして、右被告らの各行為は、新宿駅附近に赴かなかつた被告山田の行為を含め、他の多数の学生、群衆らの行為と一体となつて、二3(二)認定の鉄塀ないし映画看板の破壊、同駅構内への侵入、占拠、同駅構内における投石、放火、テレビ車への放火などの集団的暴力行為を構成したものである。

以上によると、被告らの各行為は、他の多数の学生、群衆らの行為と一体となつて、主観的関連共同による共同不法行為を構成するものと言うべく、被告らは、被告らの共同不法行為により原告の蒙つた後記五記載の損害を連帯して賠償すべき義務を負担すべきことは明らかである。

なお、被告増田の抗弁(正当行為、権利濫用)、被告猪野ら、同生川ら、同小田ら、同川村らの抗弁(正当防衛)は、本件全証拠によるもこれを認めるに至らず、いずれも採用し難い。

五請求原因6(損害額)について

1<証拠>によれば、原告は別表(一)記載の工事を、あるいは同表記載の工事請負会社に請負わせて、あるいは同表記載の原告の工場で自ら実施し、同表損壊物件名欄記載の損壊物件を修理したこと、同表記載の工事のために原告は、同表記載の各工事請負会社に各工事金欄記載の工事代金を支払い、あるいは、同表記載の原告の各工場における修理について各工事代金欄記載の費用を必要としたこと、その合計は二七八二万五六三七円であつたこと、以上の事実が認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

2右1の事実によれば、特段の事情のない限り、原告が支払つた工事代金及び原告が要した費用が損害であると認めるのが相当であり、本件全証拠によるも右特段の事情となるべき事実は認められないので、原告が本件共同不法行為により蒙つた損害は、二七八二万五六三七円となる。

なお、<証拠>によれば、原告の大井工場の事故車復旧費額表(実費)には、工事人工に対する配賦額、直接経費、材料費の各項目の他に工事人工に対する割掛と部外割掛の項目があり、右割掛は原告の納付すべき市町村納付金及び資本の利子、部外割掛は原告の本社管理費であるところ、これらは原告の工場で行う部外関連工事にすべて原告本社で定める率で課せられることになつていることが認められる。原告が一企業体として活動するものであるから、その工場で部外関連工事を行う場合、相当額の前記割掛、部外割掛を工事費に含めることは許されるものというべきであり、右各証拠によれば本件の額は不当とはいえない額であると認められる。従つて、右の事実は前記特段の事情とはなり得ないものである。

六以上によれば、原告の本訴請求はすべて理由があるから認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九三条、八九条を、仮執行の宣言につき同法一九六条を各適用して、主文のとおり判決する。

(荒井真治 関野杜滋子 野尻純夫)

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